*** 2003年6月8日 四国 御在所山 ***

1.登山口付近 2.ピンクの花
(イモカタバミ)
3.石の鳥居 4.マムシ草 5.香北町方面
6.尻見坂の
杉木立
7.尻見坂 8.石仏群 9.石仏 10.高坂山
11.白い花
(ガクウツギ)
12.アセビ1 13.アセビ2 14.ツツジ1 15.ツツジ2
16.夫婦松1 17.夫婦松2 18.御在所山
(宿舎より)


 6月8日(日)、優美な姿をした御在所山(1079m)に単独で挑戦する。この山は昨年4月以来2度目であるが、姿に似ず
途中から急な石段が連続する厳しいルートであったと記憶している。
 所で、最近高知の野山を散策中に毎回マムシやシマヘビに遭遇するので、登山時は蛇よけのためにもにステッキは
必帯である。そこで前日に準備万端整えておこうとステッキを探したが、何処にも見つからない。どうやら前回の剣
山で紛失した模様である。仕方がないので、当日高知市内のスポーツ店まで買い求めに行った関係で、宿舎出発は12
時をとっくに過ぎてしまう。
 結局午後1時半頃、登山口の木馬茶屋に到着する。茶屋前の駐車場に車を停め、葛篭織の細い車道を登り始める。
暫く歩むと、道端の可憐なピンクの花(Aさん注記:カタバミ類)が目に留まる。しゃがみ込んで写真を撮っていると、
背面から"お帰りですか"と突然声をかけられる。見上げると地元の御老人で、照れくさげに"いやこれからです"と答
える。少し立ち話をしながら、これからの道中の情報を色々御教授頂く。
 薄暗い杉林の中を小一時間ほど登ると、急に周りが開け草に覆われた土俵が現われる。傍に腰掛け、休憩している
と、木漏れ日に照らされたマムシ草が目に入る。丹沢でも良く見かけたが、今回のものは目に鮮やかな黄緑色をして
おり、名前のような不気味さは微塵も感じられない。石の鳥居を潜り抜け、急な石段を喘ぎながら登る。更に進むと、
奇妙な形をした夫婦松が現われる。ローアングルで全体を狙うが、愛用のEOS10Dでは28mmが42mm相当になり、全体を
捉えることができない。急に19~80mmクラスのIS(手ぶれ補正)付ズームレンズが欲しくなる。CANONのEFレンズ群に、
このクラスが追加されることを切に望む。道草したせいで、結局鳥居から1時間程かかって“尻見坂”に辿り着く。
この坂の上部はかなり急で、両手で捕まって登れるように2本のロープが設けられている。本来ならこのロープに頼
れば良いのだが、カメラをザックにしまうのが面倒なので、片手でカメラを押さえつつ、もう一方の手でステッキを
使って蟹歩きで進む。石段を登り切ると、二匹の石の狛犬が歓迎してくれる。此処はどうやら、霊場御在所山の入口
とも言うべき所の様である。狛犬を良く見ると"文久・・"とあり、江戸末期に作られたことが解かる。一方、山頂の
韮生山祗神社には、安徳天皇と平教盛が合祀されおり、御在所山が800有余年の永きに渡って、信仰の対象となって
きたと考えられる。
 ここで、脇道に逸れて平家落人伝説について考察する。平家落人伝説は北は青森から南は沖縄まで、全国通津浦々
にあり、武田静澄著の"落人伝説の旅"に詳しい。四国の平家落人の里としては、一般的には剣山系の祖谷地方が有名
であるが、御在所山付近も平家落人の末裔が住むとも言われ、先程の御老人も平家に縁のある方かもしれない。更に
同著では、ここから10Km程東方に在る物部岡ノ内も、新三位中将平資盛(壇ノ浦で討死が定説)に縁のある地とのこと
で、その子孫が連綿と続いていると記されている。一方、安徳天皇(壇ノ浦で8歳で入水が定説)についても以下の記
述があり、ロマンを駆り立てる。即ち、入水したのは身代わりで、実は屋島に逃げ延び後に香美郡の鉢ヶ森(1270m)
付近に潜居したと、神社の縁起書に記されているとのことである。所で、御在所山と鉢ヶ森とは5kmと離れておらず、
天皇の"行在所"がなまって"御在所"山となったと考えても不思議ではない。その後、この辺りも危険が迫ったので、
安徳天皇一行は約50Km 西に位置する高岡郡横倉山(800m)の奥地に移り住み、文治2年8月8日(西暦1200年)23歳でこの
地で崩御されるまで、ここを"行在所"とされたと記載されている。横倉山周辺には御陵や随臣の86名の墓も実在し、
更に横倉山の約5Km北東には"五在所山"まであるとあっては、にわかに真実味を帯びてくるが、真偽の程は別にして
歴史のロマンとして留め置きたい。
 少し横道に逸れたので本道に戻す。更に奥に進むと石仏群に出くわす。全部で百体近くは有ろうか、千手観音,
薬師如来他色々な仏様が鎮座している。村人が自ら彫ったと思われる素朴な仏様から、施主の名前が入った彫刻師に
任せた物まで様々であるが、不思議と全体のバランスが良く取れている。最後の急な石段を登り切ると韮生山祗神社
が現れる。神社の脇を抜け山頂を経て見晴台に向かう。そこからは、剣山から三嶺にかけての雄大なパノラマを期待
していたが、生憎本日は雲に隠れて姿を見せない。30分程粘ったが雲が晴れないので、近くの高坂山を撮影する。
写真からは、露出した白い石灰岩が点在しているのが確認できる。この一帯は典型的なカルスト地形で、昨年夏訪れ
たオーストリアのMt.Loserと類似している。一方見晴台周辺には、3枚の白い花弁を持つ花(Aさん注記:ガクウツギ)
が一面を覆っている。蝶が飛んでいる様にも見え、面白い姿をしているので開放で背面をぼかして撮影する。この後
元来た道を下る。
 尻見坂を無事通過し坂下で休息していると、鮮やかなアセビの新芽や躑躅の蕾が目に入る。やはり開放で撮影し、
自宅のPCで見ると、発色,解像度,ボケとも素晴らしい。オリジナル画像は、JPEGラージファインモードで2MB程度
の容量であるが、WEBに掲載するため200KB程度に落としても、そんなに画質が劣化したようには思えない。所が、
リバーサルフィルムからフィルムスキャナーでデジタル化し同容量まで落とすと、とても印刷に耐えない解像度にな
ってしまう。フイルム画像自体は発色,解像度,コントラストとも、RDPⅢ(フジプロビアプロフェッショナル)の方が
数段上なのだが。多分フイルムスキャナーに原因が有るのであろう。
 今回は約1年ぶりに四国の霊峰御在所山を訪れた。最後まで蛇に遭遇する事もなく、静かな登山を楽しむことが出来
た。機会があれば、歴史のロマンを求めて鉢ヶ森や横倉山に挑戦したい。

総歩数:約12,500歩
登りの厳しさ:★★

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