*** 2005年7月9日,17日 樽前山 ***

7月9日(土)
1.樽前山 2.風不死岳 3.支笏湖 4.マルバシモツケ 5.ミネヤナギ
6.エゾイソツツジ 7.イワブクロ1
(樽前草)
8.イワブクロ2 9.溶岩ドーム1 10.外輪山の登山道

7月17日(日)
11.登山道と支笏湖 12.イワブクロ3 13.イワブクロ4 14.樽前山火口1 15.溶岩ドーム2
16.噴気口 17.カルデラ 18.イワギキョウ1 19.イワギキョウ2 20.イワギキョウ3
21.イワギキョウ4 22.イワギキョウ5 23.マルバシモツケと
溶岩ドーム
24.西山からの
溶岩ドーム
25.噴気口
26.崩落した溶岩と
溶岩ドーム2
27.夕暮れ時の
カルデラ
28.巻き上がる雲


 7月9日(土)、北海道に赴任後の初登山として、何時もの相棒I氏と共に"樽前山"(1041m)に挑戦する。樽前山を知ったのは本年2月初旬であったが、車窓から望める雄姿が頭にこびりついており、機会があれば一度登ってみたいと思っていた。縁あって、4月より室蘭工大に奉職することになり、改めて調べたところ、初心者向きで、登山口の七合目まで車道が通じているとのことである。ベテランのI氏には申し訳ないが、日頃慣れない授業で忙殺され、ろくにトレーニングもしていない私にとっては、正にうってつけの山である。
 室蘭の宿舎を9時過ぎに出発し、海岸沿いの国道36号線を苫小牧へと向かう。登別を過ぎると、国道の両側に人間の背丈程もある植物群が目に留る。葉の大きさも大人の掌以上もあり、この辺り一帯を笹薮のように覆っている。I氏によると、何と"イタドリ"とのことで、本州で見かける大きさの優に2~3倍はある。何とも凄まじい繁殖ぶりである。一方、ヨーロッパに於いても、日本から持ち込んだ園芸種が野生化し、深刻な問題になっているとのことである。私自身も、97年にオーストリアのBad Ausseeを訪れた際、Altaussee湖畔に繁茂するイタドリを、実際に見かけたことがある。いずれにしても、イタドリは全世界を覆う勢いなのであろう。
 苫小牧の手前で"イタドリ街道"を離れ、一路支笏湖へと向かう。晴天なら、真正面に壮大な樽前山が望める筈だが、本日は完全に雲間に隠れている。暫く北進すると、瞬く間に街中を過ぎ、山道に入ってしまう。途中で、水と食料を補給する予定であったが、行けども行けども店らしきものが見当たらない。結局、飲まず食わずで登るしかないと諦めかけていた所、I氏が非常食があるから大丈夫だと言う。用意周到な彼に感謝する。
 七合目の駐車場には11時過ぎに到着する。登山者名簿に記帳後、やや視界不良の中を登り始める。暫く潅木地帯を進むと、可憐な白い花が目に留る。何れの名前も私には判からないので、別途WEBで調べてみると、マルバシモツケ,ミネヤナギ,エゾイソツツジのようである。潅木地帯を抜けると、急に視界が開けるが、山頂付近は雲に覆われている。また支笏湖寄りの風不死岳(1102m)も、雲間に見え隠れしている。砂利道を進むと、両側にイワブクロが見られるようになる。この花に出会うのも初めてだが、中々優雅で存在感がある。撮影に熱中している間に、I氏との距離が開いていったので、急いで後を追う。
 やっとの思いで外輪山に辿り着くと、カルデラ全体がガスに覆われ、溶岩ドームは望めない。また、噴気孔を巡るルートの入口にはロープが張られ進入禁止になっている。仕方がないので、東山(最高峰)を経て外輪山を回るルートを取る。尾根に出ると猛烈な西風が吹き抜け、油断すると斜面に転落しそうである。東山では記念撮影もせず、斜面下に逃げ込む。ここで遅い昼食を取る。I氏の秘密の玉手箱から、色んな非常食が次から次へと出てくる。昼食後尾根に戻るが、強風は収まらず火山ガスの匂いが鼻をつく。箱根大涌谷のそれ(硫化水素)とは、ちょっと匂いが異なるので、二酸化硫黄他も混じっているのかもしれない。いずれにしても、長居は危険なので早々に切り上げる。
 7月17日(日)、目覚めると好天だったので、先週のリベンジとして、樽前山に単独で出かける。諸般の事情で、登山口に辿り着いたのは、午後1時をとっくに過ぎていたが、見晴らしも良く撮影に熱中できそうである。改めて斜面全体を眺めると、至る所にイワブクロが咲いている。近寄って見ると、花弁の中には繊毛が密生している。多分、蜜を吸いにきた昆虫がもがくことにより、必ず受粉できる仕掛けになっているのだろうが、奥で息絶えている虫も見られる。となると、"蟻地獄"ならぬ"虫地獄"のような構造に、なっているのかもしれない。何れにしても、姿に似ず中々したたかな花のようである。
 外輪山に辿り着くと、眼前に雄大な溶岩ドームが迫る。噴気孔からは、盛んに火山ガスを噴出しており、東へと流れていく。道理で直行ルートは閉鎖されているわけである。そこで、今回は風上に当たる西山から、外輪山を時計方向に巡ることにする。ルート脇には、可憐なイワギキョウが各所に見られる。また、酸性雨が流れ込む沢にも、マルバシモツケが繁茂している。一方、イタドリも極一部に生息しているが、僅か数センチの大きさでしかない。次に、風下に当たる東側に回ってみると、イタドリは全く見られない。どうやら、イタドリは荒地には強いものの、火山ガスには弱いようである。いずれにしても、火山ガスが吹き寄せる劣悪な環境でないと、可憐な高山植物は縄張りを確保できないのであろう。正に、環境の違いに応じて、個々の植物が住み分けているのであって、この微妙なバランスを、人間様が破壊しないことを切に願う。
 やっとの思いで、外輪山を一周し終えると、南斜面から雲が川のように流れ込み、瞬く間にカルデラを覆っていく。視界が利くうちに、元来た道を急いで下る。
 今回は、9日,17日の2度に渡って樽前山に挑戦した。当初の計画では、翌10日は札幌五輪の滑降コースとなった、恵庭岳(標高1320m)に登る予定であったが、幸か不幸か雨天のため中止した。機会があれば、I氏と共に恵庭岳或いは別の北海道の山々に挑戦したい。

第一回目総歩数:約11,800歩
第二回目総歩数:約15,000歩
登りの厳しさ:★

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