*** 2008年7月27日 オロフレ山 ***

1.オロフレ峠 2.登別方面
(オロフレ峠)
3.オロフレ
登山道1
4.シナノオトギリ1 5.シナノオトギリ2
6.オロフレ
登山道2
7.ヨツバシオガマ1 8.羅漢岩1 9.羅漢岩2 10.羅漢岩3
11.エゾアザミ
(チシマアザミ)
12.雲間の
オロフレ山頂
13.ハイマツ帯 14.エゾノ
シモツケソウ
15.エゾフウロ
16.ダケカンバの林 17.エゾニュー1 18.エゾニュー2 19.エゾニュー3 20.イワオトギリ
21.ウメバチソウ1 22.ウメバチソウ2 23.エゾカワラ
ナデシコ1
24.エゾカワラ
ナデシコ2
25.オロフレ
への急登
26.オロフレ山頂 27.徳舜瞥/
ホロホロ山
28.徳舜瞥山 29.ホロホロ山 30.羊蹄山1
31.洞爺湖1
(オロフレ山頂)
32.洞爺湖2
(オロフレ山頂)
33.ウツボグサ 34.ヨツバシオガマ2 35.雲流
36.羅漢岩4 37.羅漢岩5 38.羅漢岩6 39.羅漢岩7 40.キタキツネ1
41.キタキツネ2 42.キタキツネ3 43.羊蹄山2 44.尻別岳 45.オロフレ山

 7月27日(日)、天気が予想以上に早く回復し、晴間も見られるようになったため、急遽ザックにカメラと望遠レンズを押し込み、オロフレ山(標高1230.8m)に向かう。この山には、本年4月6日にも一度挑戦したが、残雪が多く展望台から引き返した経緯があり、今回がリベンジに当たる。ガイドブック"北海道の山"によると、6月上旬には"シラネアオイ"や"ミヤマエンレイソウ"等の群落が、各所に見られるとある。謂わば、"花の名山"とも言えようが、既に2ヶ月余り経過しており、今回は残念ながら、自然の山々が被写体になりそうである。
 室蘭から約1時間で、オロフレ展望台に到着する。既に16時を回っているせいもあってか、広い駐車場は一台の車も見られない。ただ、山の天気はまだ回復していない模様で、通称"羅漢岩"越しに望めるオロフレ山頂も、瞬く間に雲間に隠れてしまう。往復2時間半の行程を考えると、少々ピッチを上げる必要がある。そこで、勇んで山道に分け入ると、早速循環器系に変調をきたす。ただ気にし過ぎると、益々酷くなるので、撮影の合間に小休止をしつつ先を急ぐ。
 山道の脇には、"シラネアオイ"に代わって、艶やかな黄金色の花々が風に揺れている。また、付け睫毛のように長い雄花も、印象的である。この花々の間を、蜜蜂や花虻が、先陣を争うかのように飛び交い、羽音が唸りを上げている。ただ、刺されては堪らないので、虫達を刺激しないようそっと花に近寄り、息を凝らして撮影する。後日、WEB上で検索したところ、どうやら"シナノオトギリ"のようである。
 灌木地帯を抜けると、今度はピンクの花が姿を現す。"ヤナギラン"に似てなくもないが、花弁はそれよりも小ぶりで、花数も多目である。嘗てAさんから、花の名を特定する際は、葉の形が重要と伺ったのを思い出し、改めて何枚かの写真をチェックしてみると、"ニンジン"の葉のような、細かな切れ込みが確認できる。よって、"ヨツバシオガマ"に間違いないと思われる。なだらかな尾根道を更に進むと、先程の"羅漢岩"が現れる。崩落が進み、登山道を半歩程外れると、正に千尋の谷底である。この崖淵にも、"シナノオトギリ"が、へばりつくように咲いている。見上げると、小木が生えた岩峰の上を、雲が渡ってゆく。中国・黄山とまではいかないが、水墨画の世界を少し彷彿させる光景である。オロフレ山頂に到る稜線も、秘密のベールに覆われたかのように、雲間に隠れたままである。
 "ハイマツ"帯を抜けると、急登が始まる。小石だらけの山道には、大振りの"エゾニュー"が数多く見られる。何とも奇妙な名前であるが、別途WEB上で調べたところ、"ニュー"はアイヌ語の"ニウ"に由来し、"甘い茎"を意味するそうである。道理で、約2年前の水元沢で、多くの"ヒョウモンチョウ"が、この花に群がっていた訳である。ただ、丹沢に多く見かける"マムシグサ"同様、余り見てくれの良い植物ではない。
 足元をふと見ると、先程の"シナノオトギリ"に似た花が、目に留まる。ただ、高さは僅か10㎝程度で、雄花も短かく、明らかに別種のように思える。また、周辺には、高山植物の"ウメバチソウ"も多く見られることから、高山種の"イワオトギリ"と考えられる。ここで、2000年夏に、八ヶ岳(標高約2500m地点)にて撮影した花を、改めてチェックして見ると、"シナノオトギリ"とあるが、今回の"イワオトギリ"と酷似しており、こちらを正解とすべきであろう。
 山頂直下までくると、色艶やかな"ナデシコ"が顔を出す。約7年前の夏、Aさん,Wさん,Mさんと共に、六甲山に登った際にも、東お多福山付近で見かけたが、それに比べて、花弁の切れ込みも深く、カールしている。同様にWEB上で検索すると、高山種の"エゾカワラナデシコ"のようである。心無い登山客に、盗掘されないことを願うばかりである。
 やっとの思いで、山頂に辿りつく。急いだせいで、所要時間は1時間10分、ガイドブックより20分程早い到着である。ここで、山頂から周辺の山々を順次撮影する。北方には、雲海の先に徳舜瞥・ホロホロ連山の稜線が望める。登山意欲を駆り立てる中々優美な山容である。その左手には、羊蹄山が墨絵の様に浮かんで見える。何時見ても絵になる、崇高な姿である。更に左に目を転じると、洞爺湖面が夕日を受けて、オレンジ色に輝いている。300mm望遠に交換し、ファインダーを覗くと、"中島"が画面からはみ出てしまう。70~200mm望遠ズームなら、丁度良い構図に収まるのだが! そう考えていると、このレンズを持参しなかったことが、少々悔やまれる。そうこうする内に、東のほうから雲が押寄せ、瞬く間に山々を覆っていく。正に、"雲河"とも言うべき光景である。ただ、帰路を見失う危険性があるので、急いで元来た道を下る。
 夕闇迫る中、無事オロフレ展望台に辿り着く。ここから、本道に向けて車を走らせていると、突然キタキツネが姿をあわわす。口には何か獲物を銜えており、凄い形相でこちらを睨んでいる。本年2月に、厳寒の豊浦町(ボクシングの内藤選手の故郷)を通過する際に、一瞬見かけたことがあるが、真近で見るのは今回が初めてである。そこで、ハンドル越しにカメラを構え、その姿を車内からじっくり追うことにする。ただ、狐殿の歩調に合わせ、その後を走っていると、さっと草むらに隠れてしまう。所が、その傍で暫く待っていると、再び姿をあらわし、車の前を堂々と横切っていく。このように、追いつ追われつのシーソーゲームをしているうちに、向こうも気を許すようになったのか、立ち止まって、ポーズを取るようになる。そこで、チャンス到来と、ザックから急遽望遠レンズを取出し、アップで狙う。ファインダーからは、野鼠と思しき獲物が確認できる。ただ、この狐は痩せ衰え、自然の中で生きる厳しさが、ひしひしと伝わってくる。改めて、撮影データをチェックしてみると、何とこの間8分間、約30ショットも撮影したことになる。ただ、F4.0開放,1/10以下のスローシャッターのため、殆どの写真がぶれている。この中から、比較的ましな写真をHPに掲載する。
 今回、天候が回復した合間に、急遽オロフレ山を訪問した。登山開始当初は、若干の不安もあったが、多くの可憐な花や雄大な自然に接し、精気を取り戻した。最後には、キタキツネにも出会え、有意義な休日となった。改めて、オロフレの山の神に感謝したい。

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