*** 2010年3月29日 桃源郷フンザ ***
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3月29日(月)、フンザの朝が開ける。ホテルのベランダに出てみるが、生憎の曇天で、カラコルムの名峰は雲間に隠れたままである。それでも、眼前には、アンズが満開の長閑なフンザの里が広がっている。元気な女性陣の中には、早朝の散歩と洒落込んでいる人もいる。朝食時、N氏から、道路の崩落事故のため、北部フンザ訪問が不可となった旨の、長々とした説明がある。今回のハイライトではあるが、自然災害とあれば止むを得まい。 午前中は、先ずハセガワメモリアルスクール(以下HMPS)を訪問する。アンズが咲く坂道を登って行くと、ポプラ並木の間から、バルチット城が望める。ウルタル峰をバックに悠然と聳える姿は、実に存在感がある。更に大通りを進むと、次々と子供達に出会う。カメラを向けると、少しはにかんだ様子で後ずさりするが、そのまま待っていると、撮影をOKしてくれる。色白で目鼻立ちのはっきりした、実に可愛い子供達である。流石に、アレキサンダー大王の末裔と言われるだけのことはある。次に、恋人同士と思しき二人連れとすれ違う。聞けば本当の兄妹とか。中々綺麗な英語をしゃべるお二人である。この女性も、はにかみながらも撮影に応じてくれる。ただ、タジク族風の帽子を被った中年女性は、頑強に撮影を拒否する。民族/年齢に応じて様々であるが、撮影の前に事前に断るのが、我々のマナーであろう。 50分程でHMPSに到着する。この学校は、名登山家・長谷川恒夫氏の遺志を奥様が引き継ぎ、1997年に設立されたものである。以降、日本の多くの有志からの支援で、増築が繰り返され、現在3棟の校舎で、幼稚園から中学まで400名以上が学んでいる。校庭の隅では、5人の女性がたむろしている。一番若手の女性に伺うと、全て教師で、次の授業の準備中とか。中々流暢な英語を喋る方である。スカーフも着けておらず、英国美女と言っても通じる位である。校長から歓迎の挨拶の後、授業風景を見せて頂く。今後日本からの支援が滞り、中国に取って代わられることがないことを、祈るばかりである。 次に、バルチット城に向かう。石畳の急な階段を登っていくと、豪壮な城郭が現れる。若かりし頃、大谷探検隊の紀行記(白水社版:大谷探検隊 シルクロード探検)に、この城の白黒写真を見つけ、何時の日にか、この雄姿を写真に収めたいと考えていた。今正にそれが実現し、感無量である。所で、隊長・大谷光瑞の日記には、ミンタカ峠側を越えて、1902年10月23日、この地に入ったとある。このとき、藩主(ミール)と面会しているが、1974年にこの制度が廃止された関係で、現在は警備兵が残るのみである。日本語が達者なガイドIさんの案内で、一階から最上階へと巡っていくが、残念ながら大谷探検隊の話は全く出て来ない。料理部屋の天井には、"ランネデック"と呼ばれる、明り取り兼煙突用の天窓が設けられている。最上階の3階に登ると、テラスとなっており、カラフルなガラスがはめ込まれている。ステンドグラスに詳しいSさんによると、単なる色ガラスとのことである。屋上に登ると、フンザの里の大パノラマが広がっている。望遠で狙うと、白いアンズの花と、薄緑色のポプラのバランスが、何とも美しい。ここから、土産物店を冷やかしつつ、ホテルに戻る。店のショーウインドウには、"ラピスラズリ"と呼ばれる真青な石が陳列されている。古来から、宝石或いは青色の高級顔料として用いられてきただけあって、石単体でもそこそこの値段がする。店員によると、金が混じっていており、大変お買得とのこと。一見すると、金のようにも思えるが、実は黄鉄鉱(鉄鉱石の硫化物)が混じったものである。結局、このようなまやかしの店は避け、他店の実直そうな店員から、約3割引で購入する。 昼食後、トレッキングに挑戦する。先程のバルチット城の背後を巡る、行程約12km,標高差約500mのコースである。途中、薪を背負った子供達や女性とすれ違うが、男性の姿は殆ど見かけない。働いているのは女性と子供達のみで、男性共は一体何をしているのであろうか。そのなことを考えつつ、緩やかな坂道を登って行くと、V字谷に到着する。この谷間から、ウルタル峰の岩壁が望める。それにしても、何たる迫力。標高差5000mにも及ぶ垂直の壁がそそり立っている。ただ、残念ながら、その頂は厚い雲に覆われたままである。中間点辺りを過ぎると、恐れていた通り雨が落ちてくる。一応雨支度はしてきたので人間様には問題ないが、命の次に大切なカメラが故障しては、元も子もない。それでも、3時間弱で、ホテル・イーグルス・ネストに到着する。まだ、車での御一行が到着していないので、ホテル内のストーブ前で休憩する。少し転寝したであろうか、全員集合となったので、有志でドゥイカルの丘を目指す。生憎の天気で、依然としてウルタル峰は姿を見せないが、雲が流れており、暫くここに留まることにする。帰りかけていたところ、雲の切れ間から、レディー・フィンガーとフンザピーク(双方共標高6270m)が顔を出す。まあこの天気で、二峰が撮影できれば、満足せざるを得まい。帰路は、ジープでホテル・フンザ・エンバシーに戻る。 |