*** 2010年4月1日 タキシラ遺跡他 ***
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4月1日(木)、本日は私の・・回目の誕生日である。また、今日で室蘭工大を退官し、何か重荷が取れたような安堵感がある一方、一抹の寂しさを覚える。昨晩の騒動に関しても、無関心を装う者,私に賛同する人,急にN氏に見方する人等様々であった。いざとなると、夫々の想いが交錯し、中々意見を纏めるのは難しいものである。ただ、いかんせん、要求を貫徹できなったのは、私の不徳のいたす所である。また、昨夜も殆ど眠れなかったため、やはり観光ツアーは避け、単独で約7時間かけて空港に向かうことにする。H氏に、空港までの車の手配をお願いし、部屋に留まっていた所、SさんとNさん(添乗員ではない)が、私がツアーに同行しないことを聞きつけ、心配して部屋まで駆けつけて下さる。何とも、心優しい方々である。結局、お二人の暖かいとりなしで、ツアー復帰を決意する。 本日は、ひたすら遺跡の見学である。途中トイレ休憩したKKHには、インダス川を挟む渓谷の間に、ケーブルが渡してある。長さ数百mもあろうか。暫く眺めていると、対岸の村から、人を乗せたゴンドラが、こちらに向かってくる。要するに、KKHとこの村を結ぶ、唯一の交通手段のようである。我々も試乗してみたいと、Hさんに申し入れると、快く現地の人に交渉してくれる。昨日の抗議が少しは効いたようである。このように、N氏も最初から、顧客の要求を素直に聞いておれば、お互いに、いやな思いをしなくて澄んだわけである。ただ、本日の移動中も、彼の居眠り時間は減ったものの、それが止むことはなかった。まあ、本人の責任感と緊張感の無さの現われなのであろう。 夕食後も、ショッピングの時間も取ることなく、空港へ直行。最初から最終まで、ただひたすら、自分(会社)のペースを貫いたといえる。 一方、私の体も終に異常をきたし、強烈な下痢が続くことになる。尾篭な話で恐縮だが、睡眠中に漏らしてしまったのは、今回が始めてである。帰国後、改めて医者にかかったところ、睡眠不足とストレスにより免疫機能が低下し、普段何でもないウイルスに消化器系全体がやられ、機能低下に陥った結果とか。どうりで、食物も受け付けなかった訳である。まあ、コレラ等の疾患でなかったのは、不幸中の幸いであるが、私以外の何人もの方が、同様に体調を崩されたとか。これは、N氏だけではなく、ハードな企画自体にも問題があったと言える。そんな思いもあり、今後のツアー客のためにも、要望書を同社社長並びにN氏の責任者に、メールで送りつける。その一部を以下に紹介する。 『初めてメールを差し上げます・・でございます。このたび、・・・に参加いたしましたが、余りにも貴社の添乗員N氏の対応が拙く、このままでは次回の参加者にも不快な思いをさせるだけでなく、危険に陥れる可能性が大なるため、敢えて苦言を呈しさせて頂きたいと存じます。以下に、時系列的に説明いたしますので、最後まで熟読頂きます様、お願い申し上げます。なお、以下の説明文中の敬語は、省略させて頂きます。<内容省略> まだまだ有りますが、この辺りで止め、最後に纏めを申し上げます。彼の英語力(特にヒアリング)不足による頓珍漢な対応は、経験を経ることによりある程度改善できますが、客の立場や安全を理解しよとしない強引な姿勢は、本人が自覚しない限り修正困難で、現状では明らかに添乗員失格です。聞く所によると、トレッキングツアーの添乗員も担当されているとか。彼の行動パターンを見ていると、何時”トムラウシ山”のような悲惨な事件が起きるとも限りません。<中略> 話は変わりますが、私は以前の大学の大学院で”技術開発論”を担当しておりました。ここで院生に力説致しましたのが、故ピーター・F・ドラッカー博士の唱える「顧客中心主義」です。三菱自動車のハブ/クラッチハウジングの亀裂問題,JR西日本の大事故他、その背景を院生に詳述しましたが、問題の核心は、顧客の安全を無視した「利益優先主義」と「隠蔽工作」にあります。これは、もの作り産業だけでなく、大学を含めたあらゆる機関、業種にも当てはまります。新聞沙汰になったパロマ,雪印食品,ミートホープ,石屋製菓等枚挙に暇がありません。私自身、大学にとって顧客である学生が、自分を写す鏡と考えております。生意気なようですが、御社のようなサービス業こそ、より「顧客中心主義」に徹すべきとも考えます。でないと、未来はありません。以上長々と記述いたしますたが、彼の処分を含めて、再発防止策について、誠意あるご解答をお寄せ頂きます様、改めてお願い申し上げます。N氏の、今後の成長を期待して止みません。』 以上の、抗議文に対して、同社社長名で丁重なる詫び状が届いたので、この件はこれで落着としたい。見方を変えれば、人間の醜さと優しさを同時に知る貴重な旅であったとも言えるが、失ったものも多く、二度と経験したくない"センチメンタルジャーニー"となった。草枕の最初の一節に、「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。 情に棹させば流される。 意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」とあるが、私の今の心境に正にぴったりである。私自身、元来至って静かな人間だが、今後も問題が生じた際は、少々住み難くなっても、意地(正論)を通したいと思う。 |