*** 2013年11月5日 谷川岳山麓の秋 ***
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11月5日(火)/6日(水)の両日、大山さんと共に日本百名山の一つである名峰・谷川岳(標高1973m)に初挑戦する。初日は、足慣らしとして、谷川岳山麓(谷川岳ロープウエイの土合口駅~マチガ沢~一ノ倉沢~幽ノ沢)の散策に留め、翌日谷川岳登頂を狙う計画である。今回も距離の関係で、私は上越新幹線で上毛高原駅まで行き、そこで大山さんにピックアップして頂くことになる。 11:10、無事大山さんと合流し、ここから利根川沿いの国道291号線を、土合口駅へと向かう。途中の湯檜曽(ゆびそ)温泉では、シャッターを下ろした大型ホテルもあり、この業界の厳しさを実感できる。そんな話を大山さんとしつつ北上すると、約40分で同駅に到着する。ただ、本日はロープウエイを利用せず、この駅に駐車して、徒歩で谷川岳山麓を巡ることにする。 12:05、駐車場を後にする。道路沿いの生垣では、"ドウダンツツジ"が真っ赤に色付いている。周辺の山々も色取り取りの木々で覆われ、正に秋たけなわである。緩やかな坂道を数十m進むと、車両通行止めの看板が現れる。ネット情報によると、"幽ノ沢"以降が各所で崩落しており、昭和後半に廃道となったため、現在は旧道と呼ばれているとか。なお、"幽ノ沢"までの往復距離は約9.5㎞、所要時間は約3時間というところである。従って、車に用心することなく、紅葉を楽しむことができると思いきや、何と小形バスが我々の脇をすり抜けて行く。窓には料金500円との貼紙もあり、正に関係団体の独占状態である。それでも、多くの自家用車が行きかうよりは、遥かに安全であろう。7分程歩くと、艶やかな黄葉が目に留まる。葉の形からして、"イロハモミジ"のようである。また、樹林帯には、別種の黄葉の大木も見られ、木肌が滑らか且つ斑点があることから、"ブナ"であろう。他にも、"イタヤカエデ"の黄葉も見られるが、その他は中々特定が困難であり、Aさんのお力を借りるしかあるまい。 12:28、左手に急峻な登山道が現れる。看板には、"西黒尾根登山口"とあり、大山さんによると日本三大急登の一つとか。成程、見上げるような登山道が、延々と続いている。ここから谷川岳山頂までの標高差は1227m、私の現在の体力では踏破は不可能であるが、体を鍛えて、"西黒尾根"の途中からでも、"マチガ沢"の絶壁を狙ってみたいものである。"ヤマモミジ"の樹林帯を過ぎると、急に右側の視界が開け、雄大な"白毛門山(しらがもんさん、標高1720m)が顔を出す。山腹は、黄葉の濃淡のモザイク模様になっているものの、紅葉は混じっていない。その代わりに、道端の赤紫色の"マユミ"の実が、彩りを添えてくれる。 13:07、黄葉のトンネルを抜けると、雄大な"マチガ沢岩壁"が眼前に迫る。正に絶景、標高差1000m以上もある絶壁が、屏風のようにそそり立っている。左手には、先程の"西黒尾根"が、"トマノ耳(谷川岳双耳峰の一つ、標高1963m)"へと続いている。この光景を超望遠で狙うため、一先ず"マチガ沢出合"のベンチに腰掛けたところ、先に座っていた方から、何とみかんをプレゼントされる。お礼を言って言葉を交わす中で、近くの渋川から見えた方々と分かる。私は横浜から新幹線で、大山さんはひたちなか市から車できたと伝えると、「では上毛高原で合流ですか?」と仰る。更に、我々の関係を聞かれたので、「メーカ時代の同期で、2人共メーカは退職しましたが、今でも一緒に山に行っています。」と答えると。実感を込めて「良いですね!」と仰る。代わりに、私のカメラをお貸しして、420mm超望遠での画像を御確認頂いたが、その迫力とカメラの重さに驚嘆されている。更に、話をする中で、親戚の方が港南区にいらっしゃることが分かる。私がその隣の戸塚区に住んでいるのも、何かの不思議な御縁であろう。昼食を挟んで、10分程談笑したであろうか。再会を願ってここでお別れし、我々は更に"一ノ倉沢"を目指す。途中、"ブナ"に混じって、真紅の"ヒナウチワカエデ"や、黄色の"イタヤカエデ"が見られる。カナダではないが、謂わば"メープル街道"というところか。 14:13、"一ノ倉沢出合"に到着する。正に息を飲むような光景で、"マチガ沢"より何倍も迫力があり、20数年前に訪れたヨセミテの"エル・キャピタン"の大岩壁に比べても、壮大且つ変化に富んでいる。次に、紅葉とのシーンを求めて、沢の上流に向かうことにする。河原には灰白色の岩石が多く見られ、その上の小滝は、同種と思われる積層状の巨石が剥き出しになっている。ネット情報によれば、"結晶片岩"とか。ただ、私自身は地質学には疎いので、これ以上深入りしないことにする。小滝の先は、沢伝いでしか行けないようなので、ここで撮影して引き返すことにする。420mm超望遠で、一ノ倉沢の中央岩壁を狙うと、何かで削り取られたような縦溝が確認できる。またその表面も、カール状に抉られているので、これは数万年前の氷河期の氷食痕ということになろう。ここから更に、"幽ノ沢"を目指す。旧道はこの先で舗装が途切れ、急に山道の雰囲気に変わる。落葉が積もった長閑な道を20分程進むと、崩落箇所に出くわす。近づくと、路肩から沢まで、何十メートルも切れ落ちており、足が竦む。また、この先はロープが張られ、通行止めにはなっているものの、路肩は土嚢で補強されているので、恐る恐る通過する。 15:08、正面に"幽ノ沢"の大岩壁が現れる。先程の荒々しい"一ノ倉沢"と違って、"水墨画"の世界を彷彿させる。即ち、手前の小山の植物群と、背後の大滝のコントラストが、何とも見事である。やはり、少々危険を冒してでも、ここまで来た甲斐があったと言える。ただ、ここでゆっくりしていては、途中で日没を迎える羽目になるので、この辺りで引き返すことにする。いずれにしても、天候に恵まれ、夫々雰囲気の異なる三大岩壁を撮影できたのは、大変ラッキーであったと言える。 15:36、"一ノ倉沢"手前まで戻ると、湯檜曽川(利根川の支流)への分岐点が現れる。相談の結果、新たな絶景を求めて、この道を下ることにする。灌木地帯の切れ間からは、雄大な"一ノ倉沢中央ルンゼ(急峻な岩溝)"が望める。超望遠で覗くと、何故か、近場から眺めるより迫力がある。急坂を30分程下ると、湯檜曽川の河原に出る。周辺には、急峻な白毛門山から崩落してきた膨大な量の土石が、川の大半を占めている。一方、山頂部分は夕日に輝き、その境界は谷川岳の稜線をくっきりと映し出しており、絵も言えぬ雰囲気を醸し出している。また、ここからの標高差は約1036m、まるで、この山に押し潰されてしまいそうな圧倒的迫力であり、このルートを取った甲斐があったと言える。改めて、ユーシン渓谷から丹沢・蛭ヶ岳(2002年2月9,10日参照)までの標高差と比較してみると、これを約200mも上回っていることになる。コースに戻ると、真っ赤な"ヤマモミジ"が目に留まる。何とも艶やかな色彩であり、これを撮影後に、"マチガ沢"まで戻ることにする。なお、この坂道が、本日一番の急登ということになる。 今回は、谷川岳登山の足慣らしとして、先ず山麓周辺を散策した。絶好の晴天の中、艶やかな紅葉/黄葉だけでなく、迫力満点の大自然に出会え、谷川岳の秋を十二分に堪能することが出来た。明日は、愈々谷川岳初挑戦である。 総歩数:約18,178歩 登りの厳しさ:△~▲▲(湯檜曽川からのマチガ沢出合までの登り) |