*** 2015年5月1日 春たけなわの鍋割山/富士山 ***
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5月1日(金)、前日の天気予報では、本日はまたとない晴天とあり、急に"富士山"の雄姿を撮影したくなる。間近から"富士山"を狙うなら、真南に位置する"愛鷹山"がベストだが、"宝永火口"が目立ってしまい、優美な姿とは言い難い。そこで、約14年振りに、丹沢・"鍋割山(標高1273m)"から、富士の優美な姿を狙うことにする。この際、車で"表丹沢県民の森"まで行き、その先の林道から歩き始めるが、一番の問題は、"後沢乗越(うしろざわのっこし)"から始まる急登である。これに気後れして、これまで鍋割登山を控えてきたが、今回は富士山の女神の誘惑に負けて、久々の挑戦とあいなる。なお、ネット情報によると、最大標高差は813m,累積標高差は896mと、若者にとっても、決して楽な山ではない。 7:50、自宅横浜戸塚を出発する。何時もの通り、相模川手前が渋滞していたので、NAVIも圏央道への迂回を選択すると思いきや、オーソドックスに直進して厚木ICから東名に入るルートを表示する。秦野中井ICで高速を下り、一般道を20分程北西に向かうと、雲一つない鍋割から大山にかけての山並が現れる。何度も見かけた山里の光景だが、何となく心が和むのは、私だけではなかろう。"みくるべ病院"方面に右折したあと、そのまま薄暗い林道に入る。車1台がやっと通れるくらいの道幅だが、舗装もされており、"表丹沢県民の森"へと通じている。この曲がりくねった道を10分程走ると、駐車場に到着する。連休前日とあってか、既に満杯であったが、その脇に辛うじて1台分のスペースを見つけ、そこに駐車して山支度をしていると、若者の男女三人組が、軽く会釈して通り過ぎて行く。本日は真夏日とあってか、彼等は半パンの軽装姿である。 9:40、私もゴアテックス製ウエアをザックに押し込み、愈々出発である。この先から非舗装の林道を数10m程進むと、車止めのゲートが現れる。この周辺にも、数台駐車している。ゲート脇を抜けて林道を進むと、艶やかな新緑の若葉が、目に染み入るようである。"四十八瀬川"に掛る"勘七橋"まで来ると、先程の3人組が、新緑の山々をバックに中高年の方に写真を撮ってもらっている。彼等の背後の山々が、何とも見事なモザイク模様であったので、私もこの光景を撮影する。更に"ヤエザクラ"を狙っていたところ、先程の中高年の方から、"丁度見頃ですね"と声を掛けられたので、暫し立ち話をする。どうやら、登山コースの管理者のようだが、この方から、近道の"平成の森"を教えて頂く。成程、橋を渡った左手に、立派な石碑まで立っている。お礼を言って、このルートに分け入ると、先程の3人組が引き返してくる。聞けば、何とこの先は行き止まりとか。私も、そんな筈はないと思って、沢沿いの道を行けば大丈夫と言うと、しぶしぶ私の忠告を受け入れる。所が、暫くして砂防ダムが現れると、踏破不可と勘違いしたのか、Uターンして脱兎の如く引き返していく。だが、冷静に対岸を眺めると、道らしき物が確認できたので、川を渡って"旧登山訓練所"の脇の斜面を登ると、砂防ダムの上に辿り着く。そこから、再度川を渡ると、無事"西山林道"に合流する。やはり、ショートカットの効果抜群で、背後には先程の若者達の姿は確認できない。何か得をしたような気分で、新緑の若葉を撮りつつ、"二俣"に向かう。 10:04、"二俣"に到着する。ここで、"四十八瀬川"に掛る木道を渡り、緩やかな坂道を登ると、右手に"小丸"への分岐が現れる。ふと、Aさんが、嘗てここで"ランヨウアオイ"を見付けて、大喜びしたのを思い出す。"尾関広氏銅像(丹沢の環境保全に貢献した登山家)"を過ぎると、道端に薄紫色の小花が目に留まる。何処かで見かけたような気もするが、ネット上で検索しても判別できないので、ここはAさんにお願いするしかなかろう。更に林道を進むと、真っ赤な"ヤマツツジ"が咲いている。これを、じっくり撮影していた所、先程の三人組が追い越して行く。道々、新たな被写体を探していると、今度は真っ白な"ヒメウツギ"が目に留まる。これが、進むに従い、樹高5~6mもありそうな大物も現れる。これくらいになると、正に壮観と言う他ない。林道の先には鍋割山稜が望める。正面のピークは、嘗て辿った"小丸"(標高1341m)であろうか? 10:45、"ミズヒ沢"に掛る筏状の橋を渡る。長かった林道歩きを終え、ここから愈々山道に入ることになる。沢の周辺には、ブナが多く見られ、谷間が薄暗いせいで、逆光に映える若葉が、何とも艶やかに映る。沢を渡り、杉林の中を登って行くと、間伐された杉の切株が、恰好の休憩用の椅子になっている。坂道を登りきり暫く進むと、目の覚めるような新緑のブナの下に、道標が現れる。ここで立ち止まり、ふと見上げると、"ミズヒ沢"の急斜面に、薄緑色の露岩が確認できる。これは、丹沢で良く見られる"緑色凝灰岩(グリーンタフ)"に間違いなかろう。帰宅後、改めて受験研究社の"SUPER理科辞典(私の写真を提供した際に頂戴したもの)"を捲ってみると、「うすい緑色の凝灰岩が、日本海側,関東北部,静岡市から新潟県糸魚川市にいたる大地溝帯に広く分布している。この凝灰岩は、第三期(2300万年~260万年前)の海底火山活動によって噴出されたもので、変質して緑色がかった岩石になったとされている。・・・」とある。また、栃木県産の"大谷石"も同類で、同時期に海底で形成されたようである。なお、富士山の活動期は、精々1万年前と言われているので、富士山が噴出した火山灰が堆積し、変質したものではないのは明らかである。 11:34、"後沢乗越(標高800m)"に到着する。ここから山頂まで、473mもの急登が延々と続くことになる。途中の標識には、5番(後沢乗越)から11番(山頂)まで、番号が振られており、「緊急時は、上の番号を連絡して下さい」と記されている。私自身も、この御厄介にならないよう、スローペースで登って行く。また、急坂左手には、"トウゴクミツバツツジ"が垣間見られるようになったので、これらを撮影しつつ小休止する。第二の急坂を登っていたところ、雑木林の奥に、艶やかな"トウゴクミツバツツジ"が目に留まる。そこで、登山道を外れ、急斜面を恐る恐る横切って、この花の真下に辿り着く。"虎穴に入らずんば虎児を得ず"ではないが、少々の危険を冒さないと、中々満足できるショットは得られないようである。登山道に戻り、急坂を登りきると、今度は奇妙な恰好の松が現れる。真ん中の幹を取り囲むように、湾曲した幹がタコの足のように伸びており、成因は不明だが、何とも気になる存在である。ここで、山ガールが下山してきたので、富士山の眺望を聞いたところ、山頂手前の展望台の方が、絶景が望めるとか。それを知って、急に元気が出てきたので、途中で"アセビ"の花を撮りつつ、急ぎ足で展望台に向かう。この花を見ていると、何度か御一緒したMさんを思い出す。 13:40、やっと展望台に辿り着く。絶景とは言い難いが、雲がかかった富士山が、眼前に広がっている。ここでなら、落ち着いて撮影できそうなので、先ず腰を下ろすことにする。レンズを交換して順次撮影しているうちに、山頂を覆う雲が、ゆっくりと左に流れて行くのが判明する。ただ、次の巨大な雲塊で、山頂が隠れてしまったので、この間に遅い昼食を取る。それでも、あと10分もすれば、この雲も晴れそうに思えたので、超望遠レンズを装着したまま、山頂へと急ぐ。それにしも、首がどうにかなりそうなくらい、重く感じる。 14:20、やっと鍋割山頂に到着する。連休前日とあってか、4~5組の登山者が、恰好の場所を占拠中である。そこで、少し下った草地から、富士山を狙うことにする。予想通り、山頂の雲は晴れたものの、中腹は相変わらず雲に覆われたままである。これ以上を望むなら、もっと早出して、雲が湧く前に山頂に到着すべきであろう。ここから、"ヤマザクラ"や"アセビ"の花々を撮りつつ、元来た道を下る。 今回は、富士山の雄姿を求めて、14年振りに鍋割山に挑戦した。体力の衰えは如何ともしがたく、途中で何度も引き返したくなったが、我慢した御蔭で、富士山の女神にも出会え、有意義な一日となった。機会があれば、"塔ノ岳"や"三つ峠"からも、富士山を狙ってみたい。 総歩数:17,372歩 登りの厳しさ:△~▲(表丹沢県民の森~ミズヒ沢) ▲~▲▲(ミズヒ沢~後沢乗越) ▲▲~▲▲▲(後沢乗越~鍋割山頂) |