*** 2015年5月20日 愛鷹山のツツジとイワカガミ ***
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5月20日(水)、好天が期待できそうなので、ツツジを求めて"愛鷹山越前岳(標高1504m)"を目指す。ここ数年、越前岳に登るたびに、山頂付近のツツジの大群落が気になっていたが、今回初めて開花期に訪問することになる。ネット情報によると、固有種の"アシタカツツジ"や高山植物の"イワカガミ"も見られるとか。何れにしても、花巡りの登山となりそうなので、時間を気にせず、じっくりと花々を撮影することにする。 6:50、自宅をあとにする。相模川の手前まで来ると、何時もの通り渋滞に巻き込まれたので、圏央道に迂回してから東名高速に入る。御殿場ICで高速を降り、469号線を西に30分程ひた走ると、薄雲に覆われた愛鷹山越前岳が姿を現す。交差点を右に折れ、曲がりくねった道を進むと、"富士サファリーパーク"が現れるが、ここを素通りして、十里木の別荘地帯を走ると、登山口となる十里木駐車場(標高880m)に辿り着く。平日のせいか、10台程度が駐車しているのみである。正面には、雄大な富士が望めるが、道路沿いの電線が邪魔して、撮影する気になれないので、このあと展望台から、腰を据えてその雄姿を撮影することにする。これが、結果的に、唯一のシャッターチャンスを逃すことになる。 9:05、登山支度をして、愈々出発である。ただ、最初から、見上げるような急階段が待ち構えており、そのまま大股で駆け上がると体力を消耗するので、その右脇を、富士山を背にしてスローペースで登って行く。約15分で、何とか展望台に辿り着くと、一転、山頂付近は雲間に隠れてしまっている。そこで、休憩を兼ねて、ここで雲の通過を待つことにする。 20分以上も粘ったであろうか。だが、雲が晴れるどころか、中腹までも厚い雲が覆い、悪化する一方なので、撮影を諦め登山を再開する。電波塔を過ぎ、灌木地帯に入ると、"ウツギ"類が散見されるようになる。ネット上で調べた限りでは、濃赤色のものが"フジベニウツギ"、紅白混じったものが、"ハコネウツギ"であろうか。別途、Aさんに調べて頂いたところでは、後者は"ヤブウツギ"が正解のようである。 10:00、新緑の雑木林の中を登って行くと、艶やかな"ツツジ"が目に留まる。丹沢で良く見かける"トウゴクミツバツツジ"に比べて、小振りで色も濃く別種のように思えるが、オリジナル画像を確認してみると、三つ葉であるので、やはり同種であろう。この先の"馬ノ背(標高1099m)"では、三組の登山者が休憩中である。私もその一角に陣取ったが、富士山は麓から上が、厚い雲に覆われてしまっている。よって、富士山撮影は諦め、新緑の若葉や花々の撮影に集中することにする。"馬ノ背"周辺は、日当たりが良いせいか、大振りの"ヤマツツジ"が多く見られる。その先の岩場を越え、薄暗い山道に入ると、谷側の斜面に、"ツツジ"が見られるようになる。赤花は"ヤマツツジ"として、それ以外に赤紫色のツツジも確認できる。改めて、オリジナル画像をチェックしたところ、葉が5枚で花弁もやや縮れ気味なので、これが彼の"アシタカツツジ"であろうか。また、ブナの新緑が目に染み入るようなので、ここで立ち止まって、ブナの若葉を撮影していたところ、単独行の山ガールに追いつかれる。会釈をして、暫し立ち話をしたところでは、御仲間は本道ではなく、谷側を略平行に走る"獣道"を自己責任で登山中とか。また、地元・富士市御在住で、この山の"生き字引"のような方である。更に、情報収集能力にも長けていて、先程"馬ノ背"ですれ違った方は、遠路山口県から車でお越しで、本日"愛鷹山"の後は、"金時山"にも挑戦されるとか。つまり、リタイヤー後、全国津々浦々の名山を、車で巡られているようである。それを聞いて、高倉健の遺作"あなたへ"を思い出したが、それはさて置き、山頂付近には、"ミツバツツジ"と"アシタカツツジ"の群落が見られるとか。更にこの季節、"富士見台"方面に下ったところに、"イワカガミ"も咲いているとか。実に饒舌な方で、話が尽きなかったが、私は写真を撮りながらゆっくり登るため、ここでお礼を言ってお別れする。この方の御蔭か、暫くすると、間近に"アシタカツツジ"らしき花が現れる。近寄って観察してみると、葉数/花弁の形とも、"トウゴクミツバツツジ"と異なっており、"アシタカツツジ"に間違いなかろう。次に、平坦地(馬場平:標高約1300m)を過ぎると、左手に"ブナ"の大木が現れる。永年の風雪に耐えたせいか、奇妙な形に枝分かれしており、存在感抜群である。"ブナ"の樹林帯を抜けると、今度は"トウゴクミツバツツジ"の群落と、次々と植生が変化して行く。 12:15、"勢子辻分岐"を通過する。標識には、10分で最高峰の越前岳とあるが、先程の山ガールの方が仰った通り、周辺にはツツジの大群落が見受けられる。そこで、少々道草して、この一帯に分け入ると、"トウゴクミツバツツジ"と"アシタカツツジ"が競い合うように咲いており、正に壮観と言う他ない。更に、良く見ると、"ムラサキヤシオ"らしき別種の"ツツジ"も確認できる。このツツジの楽園は、"塔ノ岳"(2010年6月2日参照)にも、勝るとも劣らぬ美しさである。また、"塔ノ岳"と違って、登山道の間近に群生しているのは、奇跡に近いのではなかろうか。所で、"ツツジ"は漢字で"躑躅"と書くが、某由来辞典によると、「躑躅(音読みでテキチョク)とは、躊躇(同チュウチョ)と同義であり、見る人の足を引きとめる意味から、この字が当てられたと言われている。」とあり、正に言い得て妙である。何れにしても、重いカメラとレンズを持って、登ってきた甲斐があったと言える。ここで、ふと時計を見ると、3時間強も要したことになるが、不思議と時間経過が実感できない。これは、時間を忘れて、撮影に熱中できたせいであろう。 12:33、越前岳山頂に到着する。本来なら、この急斜面にも、若葉とツツジの見事なモザイク模様が見られる筈だが、猛烈な勢いで雲が巻き上がり、全く視界が利かない。仕方が無いので、山頂での昼食を早々に切り上げ、"イワカガミ"を求めて、"富士見台"方面に下ることにする。途中の尾根道には、"ツツジ"は垣間見られたものの、肝心の"イワカガミ"は、蕾はおろか葉さえ確認できない。"富士見台"も間近となり、諦めて引き返そうとしたところ、草叢に可憐な"イワカガミ"を発見する。やはり、先程の"山ガール"の方を信じて、正解であったと言える。"イワカガミ"に出会うのは、道南の"オロフレ山"(2009年6月28日参照)以来であるが、この花を、脇を締め息を凝らして、420mm超望遠で撮影する。改めて、画像を確認してみると、ぶれも目立たず、そこそこシャープな画像が得られている。手持ち撮影をモットーにする私にとって、この程度の写真が撮れなくなった時が、私の引退時期であろう。ここから元来た道を越前岳へと戻る。 13:40、越前岳山頂に到着する。この周辺で、再度"ツツジ"を撮影したのち、下山することにする。約1時間半で、"馬ノ背"まで戻ってきたが、相変わらず富士は姿を見せない。そこで、カメラをザックに押し込み、店じまいをすることにする。所が、その矢先に、目の前に野生鹿が現れる。ほんの1~2秒間のにらめっこが続いたが、私がザックからカメラを取り出している間に、姿を消してしまう。そこで、雑木林を覗いて見ると、草が倒れこんだその先に、一頭の鹿が去っていくが確認できる。結局、その姿を写真に収めることはできなかったが、これこそ、本物の"獣道"である。やはり、シャッターチャンスを逃さないためには、最後までカメラを手離さないのが肝要ということであろう。 今回は、"ツツジ"が咲く季節に、"愛鷹山"に初挑戦した。生憎、富士山の雄姿は、写真に収めることができなかったが、山ガールの方の的確なアドバイスの御蔭で、艶やかな"アシタカツツジ"や清楚な"イワカガミ"の花々にも出会え、十二分に愛鷹山を楽しむことができた。機会があれば、別ルートからも、愛鷹山に挑戦してみたい。 総歩数:10,435歩 登りの厳しさ:▲▲~▲▲▲(一部▲) |