*** 2015年10月28日 至仏山の秋 ***
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10月28日(水)、本日は、愈々尾瀬ヶ原に聳える百名山・"至仏山(しぶつさん,標高2228m)"初挑戦である。ガイドブックには、"谷川岳天神尾根コース"が一般向けと記載されているのに対し、"至仏山"は健脚向けとあり、私にとってはハードな登山になりそうである。そこで、1分でも多く登山時間を確保するため、昨晩中にホテルの清算を済ませ、朝食も他の宿泊客より15分早くして頂く。また、天気予報によると、本日も晴天のようだが、山の天気は気まぐれなので、万一に備えて雨具/軽アイゼンも持参することにする。 6:30、起床。本日も晴天、宿泊した307号室の窓からも、色付き始めたモミジが見えたので、ホテル出発前に、撮影することにする。7:50、KKR水明荘をあとにし、途中のコンビニで昼食を仕入れたのち、関越道から国道120号線を経て尾瀬戸庫駐車場を目指す。更に、ここに私の車を駐車し、大山さんのSUV(X-TRAIL)で、"鳩待峠(標高1591m)"まで登り、9:40から登山を開始する計画である。ところが、予定より早く9時前に戸倉駐車場に到着したものの、鳩待峠駐車場は満車との看板が掲げられている。この時間にして満車とは、少し怪訝に思ったが、案内板に従い戸倉駐車場に向かう。ここで、大山さんが、改めて係の人に確認したところ、鳩待峠の駐車場が満車なので、乗合タクシーかバスしか交通手段がないとか。仕方が無いので、当初の計画を変更して、2台共ここに駐車し、片道930円也のチケットを購入して、乗合タクシー(実際は小形バン)の出発を待つことにする。 9:50、"鳩待峠"に到着すると、予想通り駐車場(何と一日2500円)は、7~8台分の空きスペースがあり、看板を無視して登ってきた車が、次々と駐車していく。正に騙し打ち遭った恰好で、暫く怒りが治まらなかったが、客商売には所詮この程度の嘘偽りは付きものなのであろう。ただ、何時までも怒っていても登山に差し支えるので、気分を変えて、登山に集中することにする。 9:52、愈々登山開始である。単純に標高差を計算すると637mであるが、"小至仏山(標高2173m)"から一旦下るので、累積では800mを超える厳しさとなる。大山さんは、律儀に登山カードを投函しているが、その後私自身も、その重要性を痛感する羽目になる。緩やかな登山道を進むと、間もなく"ダケカンバ"の林が現れる。嘗て、道南の"ニセコアンヌプリ"山腹で、密生した"ダケカンバ"の大群落(2009年10月19日参照)を見掛けたが、こちらは疎らである。そうこうするうちに、クマザサの中に、艶やかな"ナナカマド"の実が見られるようになる。登るにつれ、次第に大振りになり、正に壮観と言うほかない。また、"アオモリトドマツ"も加わり、植生がどんどん変化していく。40分程で最初の木製の階段が現れ、以降傾斜が徐々にきつくなっていくが、息切れするような厳しさではない。所が、南側が開けた木道を登っている際に、ふと片品村方面の山々を眺めると、雨雲が猛烈なスピードで流れ落ちてきて、あっと言う間に山々を呑み込んでいくのが確認できる。この分だと、此方の登山道が雨雲に覆われるのも、時間の問題であろう。 11:12、"尾瀬ヶ原"が一瞬姿を見せる。喜びも束の間、視界は急激に悪化し、そのうち小雨も混じるようになる。木道も雨に濡れ、スリップし易くなったので、一歩一歩踏みしめるように登って行く。森林限界を過ぎると、今度は露出した"蛇紋岩"が現れ始め、木道が途切れた先の急傾面を登る際は、細心の注意が必要となる。ここを無事踏破したのも束の間、却って気が緩んだせいか、ラグビーボール大の濡れた"蛇紋岩"に足を取られ、ザックから転倒する。幸い、倒れ込んだ先がブッシュであったため、カメラ/身体共に損傷はなく、事なきを得る。ただ、冷たい雨が本降りになってきたので、カメラをザックに押し込み、店仕舞をする。だが、雨に濡れた"ナナカマド"の実を眺めていると、"小雪が積もったナナカマドの実(2009年10月11日参照)"を思い出し、急に撮影意欲が湧いてくる。さりとて、立ち止まってカメラを取り出す余裕もないため、もしチャンスがあれば、下山時にこの光景を撮影することにする。更に、"小至仏山"への急登が始まる地点まで来て、先頭を大山さんに譲ると、タフな大山さんは、ハイペースで急階段を登っていき、あっという間に雲間 に消えていく。そうこうするうちに、ズボンにまで雨水が浸透し、下肢が冷えてくる。雨になる前に、ゴアテックス製に履き替えるべきであったが、後の祭りである。私も弱気になり、"低体温症"の可能性も頭をよぎったため、大山さんに携帯で、"至仏山"登頂を諦め、ここから下山する旨を告げる。 12:35、数分程下ったであろうか、丁度腰掛けにぴったりの岩が見つかったので、ここで昼食を兼ねて小休止する。そのうち、雨も小降りとなり、改めて闘志が湧いてきたので、大山さんに再挑戦の意志を伝えようと、携帯に連絡を入れたところ、「こちらは ソフトバンクです、おかけになった電話は電波の届かない場所に居られるか、・・・」なるメッセージが流れる。仕方が無いので交信は諦め、そのまま急階段を登り、何とか尾根道に出ると、今度は台風並みの寒風に晒される。やはり、2000m級の山は、低山とは全く別の姿を見せるものである。それでも、"小至仏山"には登頂しようと、雨に濡れた"蛇紋岩"の登山道を、恐る恐る登って行く。 12:52、何とか"小至仏山"に到達すると、山頂には墓標のような石碑があるのみで、視界は全く不良である。ただ、幸運にも、雨が小降りになってきたので、ここで徐にカメラを取り出し、付着した水滴やレンズの曇りを取り除いたのち、この石碑を撮影する。改めて大山さんの携帯にサプライズコールを掛けたところ、幸運にも今回は何とか通じる状態である。大山さんは、私の登山復帰に驚愕しているが、私も、大山さんが無事"至仏山"直下まで到達したことを知り安堵する。どうやら、お互いが尾根道に出て、電波が通じ易くなった模様である。ここで、改めて携帯の有難さを実感することになったが、今後更にGPS付携帯を有効活用すれば、遭難防止にも繋がると考えられる。このあと、途中で大山さんと合流するため、"至仏山"に向かってハイマツ帯を下り始めたところ、その先の登山道がガスの中に消えている。また、赤いペンキやテープの道案内も確認できないため、万一沢に迷い込み、動けなくなっても拙いので、残念ながらここから引き返すことにする。大山さんには、写真を撮りつつ、ゆっくり下山する旨を告げる。 13:18、"小至仏山"まで戻り、ハイマツ帯を進むと、その中に"真っ赤な実"が目に留まる。枝振りからすると、"ツツジ"の一種のようにも思えるが、何れにせよ、帰宅後改めて名前を特定するため、数ショット撮影する。何か得をしたような気分で、濡れた"蛇紋岩"の上を、カメラを片手に抱えたまま、細心の注意を払って下って行く。また、登りの際は、"小至仏山"の荒々しい光景を収めることが出来なかったので、振り返って撮影する。なお、"赤い実"の名前特定は、思いの外難航し、結局Aさんのお力を借りた結果、"タカネバラ"と判明する。この際、"赤い実"本体以外の幹や棘の写真が、功を奏した格好だが、Aさんは、最初からこの科を思い浮かべていたようである。改めて、ネット上でこの花の写真をチェックしたところ、カナダの首都オタワで見かけた"ハマナス(2009年8月25日参照)"に酷似している。また、奥尻島で撮影した"ハマナス"の実(2006年8月17日参照)は、"タカネバラ"のそれに比べて、形/大きさとも異なるものの、朱色と先端の枯れた萼等、バラ科共通の特徴が見受けられる。 14:03、何とか岩場を下ってくると、雨に濡れた"ナナカマド"の実が目に留まり、早速この光景を標準ズームで撮影する。次に、長い木道の先にベンチが現れる。この付近に、更に大振りの"ナナカマド"の実が見られたので、ベンチの上で望遠レンズに交換し、アップで狙うことにする。この間、男性二人組が、挨拶をして通過して行く。間もなくすると、"ドスン"という音がして、"やってしまった"との奇声も聞こえてくる。改めて、2本の木道を眺めると、片側には等間隔に横木が設けられているものの、他方には見られないので、多分こちらを歩いた方が、スリップした模様である。私も今後は、横木付き木道を歩くように心掛けたい。笠ヶ岳分岐を過ぎ、更に数分下ると、急に視界が開け、"オヤマ沢田代(さわたしろ,標高2040m)"が現れる。この高地にある泥炭質の湿地帯には、"池溏(ちとう)"と称する小沼群が見られ、その脇に巨大な"蛇紋岩"が露出している。ここで、色々な角度から、この湿原を撮影するため、2本の木道を渡り歩いていたところ、背中から転倒する。資源保護を考えると、木道上でアイゼンを使う分けにはいかないので、やはり、緩やかな木道を歩く際も、油断大敵であることを思い知る。 15:24、片品村方面が望める地点まで戻り、山側斜面に目を遣ると、"ナナカマド"の木々が群生しているのが確認できる。よって、今月初旬は、さぞかし見事な紅葉に覆われていたと推定できる。ここで、再度雨に濡れた"ナナカマド"の実を撮影していると、木道を駆け下りてくる足音がする。振り向くと、何と大山さんである。御歳・・才にしてこのスピードに、私も感心すると同時に、無事な姿を見て一安心したが、"至仏山"に向かう途中でスリップしかけたとか。やはり、雨の"至仏山"は、思わぬところに危険が待ち構えているため、今後は避けた方が賢明であろう。乗合タクシーの待ち合わせ時間が迫ってきたので、ここから、脱兎の勢いで下山する。 今回は、10月27日/28日の両日、大山さんと共に榛名山・掃部ヶ岳/至仏山に初挑戦した。生憎、二日目は私の体力不足で至仏山まで御一緒出来ず、大山さんには御迷惑をかける結果になったが、私なりに、2000m級の山の厳しさと楽しさを同時に味わうことができた。機会があれば、好天時に再挑戦したい。 総歩数:13,747歩 登りの厳しさ:▲~▲▲(鳩待峠~小至仏山手前),▲▲▲(小至仏山手前~小至仏山) 雨天時の転倒の危険性:▲▲▲(オヤマ沢田代~小至仏山) |