*** 2015年12月1日 秋の大倉尾根/塔ノ岳 ***
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12月1日(火)、今年は、町中の紅葉も1~2週間遅れているようなので、山の紅葉と富士の雄姿を求めて、"大倉"から丹沢"塔ノ岳(標高1491m)"を目指す。前回は、"雑事場ノ平"及び"見晴茶屋から駒止茶屋"にかけて、見事な"ヤマモミジ"の紅葉が見られたが、今回も運よくその絶景に巡り合えるか否かは、神のみぞ知るというところか。なお、"大倉尾根"の紅葉を撮影するのが4年振り(2011年11月26日参照)、"塔ノ岳"挑戦は5年半振り(2010年6月2日参照)となる。また、標高差1211m/片道7kmの、久々のハードな登山である。9:02、大倉駐車場(標高280m)を後にする。登山口に向かって車道を歩いて行くと、農家のモミジが真っ赤に色付いている。この分だと、標高の高い大倉尾根のそれは、既に落葉している可能性があるが、その場合は登山に集中するしかない。そうこうするうちに、民家の垣根に、真っ赤な"カラスウリ"が目に留まる。"山里の秋"に相応しい光景だが、カラスが好むか否かは別にして、人間様にはとても食せないような毒々しい色をしている。 9:09、杉林の手前に登山口が現れる。この薄暗い山道を抜け、緩やかな坂道を登って行くと、色付き始めた雑木林が望める。葉形からすると、"イロハモミジ"のようだが、中には、丸形の"ダンコウバイ"と思しき黄葉も混じっている。だが、標高が山里より高いにも拘わらず、何故か紅葉が遅れている模様である。よって、"雑事場ノ平"から先のモミジも、散り落ちていない可能性大と考えられる。一安心して、緩やかな山道を登って行くと、分岐点が現れる。何時もの通り、ここを左に折れ、眺望の良い"大観望コース"を進むことにする。数分で、杉林の切れ間から、表尾根の"二ノ塔(標高1144m)が望める。 9:52、色付き始めた紅葉を眺めつつ、斜面を登って行くと、西側の鍋割山稜の奥に、雪を頂いた"富士山"が顔を出す。ただ、手前の山々と小枝が邪魔して、全貌を捉えられないが、今後登るにつれ、更なる絶景が期待できそうなので、敢えてここから超望遠で狙わないことにする。そうこうするうちに、下山中の男性から、「カメラが重そうですね!」と、声を掛けられる。登るスピードが遅いので、そう思われたかもしれないが、私も、「趣味なので仕方がありませんが、ザックのレンズを含めると、10kg程度になります。」と返答すると、驚愕しておられる。考えて見れば、何も辛い思いまでして、全交換レンズを持参する必要はないのだが、色々な被写体をそれ相応のレンズで写真に収めたくなるのが、撮影マニアの悲しき性(さが)でもある。 10:07、"大倉高原山の家(標高約590m)"に辿り着く。山荘の背後には、高さ10m以上もありそうな椛の大木が、一帯を覆っている。裏側に回ると、逆光に透ける赤/橙/黄色のグラデュエーションが、何とも見事である。この下には、2張りのテントが設置されており、ここでゆっくりと、紅葉狩りを楽しむのも一考であろう。この先の"雑事場ノ平"から、その名の通り平坦地が続き、この一角のベンチで小休止する。ここで、大倉からのルートと合流し、以降一本道となる。暫くは、見晴らしの効かない平坦路を、延々と歩むことになる。 10:18、"見晴茶屋(標高約610m)"に到着する。この間、殆ど高度を稼いでいないため、"塔ノ岳"山頂まで、900m弱も余していることになる。ただ、ここから傾斜がややきつくなるものの、その先の見事に紅葉したモミジが目に浮かび、急に足取りが軽くなる。木道が始まる地点まで来ると、中間点付近に、様々な色合いのモミジが確認できる。標準ズームを望遠側にして、ファインダーを覗くと、まるで"モミジのトンネル"のように写る。山道を廊下に例えると、"モミジ回廊"とも言えようか。木道脇のモミジを撮り終え、ふと東方を眺めると、真紅のモミジが目に留まる。幸い、木道脇には、環境保護用のロープが設置されていなかったので、近づくと、その先には艶やかな黄葉も確認できる。それにしても、何とも見事なコントラストであろうか!やはり、無理をしてでも、重い望遠レンズを持って来た甲斐があったと言える。この幸運を丹沢の神に感謝しつつ、あらゆる角度から、この光景を撮影する。ここで、急に元気が出てきたので、更なる高みを目指すことにする。 11:09、"モミジ回廊"を登りきり、鞍部(標高約800m)に出ると、木の間から"富士山"が顔を出している。今回は、標高が上がったせいで、鍋割山稜に邪魔されることなく、雄姿を見せている。ここで暫し立ち止まって、超望遠で山頂を撮影したものの、依然として小枝が写り込んでいるので、眺望の利く場所から、再トライすことにする。"駒止茶屋(標高約900m)"を通過すると、表丹沢の"三ノ塔(標高1203m)"が望める。何時見ても、実に堂々とした山容であるが、ここから一旦200m以上下って、"塔ノ岳"に向かうことになるので、大倉尾根コースよりハードであると言える。だが、機会があれば、再挑戦したいルートの一つではある。"堀山の家(標高960m)"手前まで来ると、高校生位の若者が、杖をつきながら下ってくる。何とも痛々しい姿なので、声を掛けると、急いで下る際に膝を痛めてしまったとか。彼が無事大倉に辿り着くのを祈ると共に、私自身も、帰路は細心の注意を払って下山することを、肝に銘じる。"堀山の家"では、中高年と高校生の一団が、ベンチを占領していたので、ここを素通りする。この先から、徐々に傾斜がきつくなり、木の間から"富士山"が現れたものの、超望遠でじっくり狙う余裕がなくなり、"花立山荘"まで先延ばしする。これが本日唯一の失敗で、以降"富士山"は雲間に隠れたままとなる。改めて、絶好のシャッターチャンスは、二度と巡ってこないことを思い知らされる。 12:28、"天神尾根(標高1128m)"に到着する。丁度昼時なので、ここのベンチで昼食を取る。5分程で早々に切り上げ、次の"花立山荘"を目指す。所で、この尾根は、"戸沢"からのルートとの合流点に当たり、そこには立派な標識が立っている。この前で、若者達が"戸沢"について話しあっているが、私自身も、嘗て濃霧の中、道を間違え此方に下りてしまったことを思い出す。それでも、この失敗により、いざとなれば、元来た道を引き返せば、無事帰還できることを体得できた訳である。ここから、大倉尾根最大の急登が始まるが、超スローペースで、一歩一歩踏みしめるように登って行く。英語の諺に例えるなら、「He who would climb the ladder must begin at the bottom.」と言うところか。 13:18、急階段を登りきると、やっと"花立山荘"が現れる。早速富士山の雄姿を撮影するため、西側のベンチに向かうと、富士山周辺は厚い雲に覆われ、その位置すら確認できない。この様子だと、ここで幾ら待っても雲が晴れそうにないので、東側の"三ノ塔"他を撮影したのち、"塔ノ岳"に向かうことにする。だが、傾斜は、以前より緩やかになったものの、相変わらず楽な登りではない。所が、"花立(標高1370m)"を過ぎると、木道の平坦地となり、その奥に"塔ノ岳"が鎮座している。"金冷し"まで来ると、崩落箇所が現れるが、その上には立派はアルミ製ブリッジが掛けられており、通過する際に、全く不安は感じられない。切れ落ちた谷の先には、"檜洞丸(標高1601m)"が悠然と聳えている。最後の木製階段を登りきると、懐かしい"尊仏山荘"が現れる。 14:08、やっと"塔ノ岳"山頂に到達する。所要時間は、休憩時間も入れて5時間強と、前回より1時間ばかり多くかかっているが、加齢の分を考慮すると、自己満足すべき値であろう。だが、日没時間を考えると、山頂でゆっくりと感慨に耽っている余裕はないので、"蛭ヶ岳(標高1673m)"他、丹沢の名峰を撮影したのち、急いで下山することにする。 《総歩数:23,090歩,登りの厳しさ:大倉~堀山の家(▲~▲▲),堀山の家~花立山荘(▲▲~▲▲▲),花立山荘~金冷し~塔ノ岳(▲▲~▲~▲▲)》 |