*** 2019年11月1日 谷川岳の秋 ***
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11月1日(金)、朝から晴天で、水明荘のモミジも程よく紅葉しており、この分だと谷川岳山麓も見事な光景が期待できそうである。また、前日大山さんと打ち合わせた結果、お互いの心肺能力差を考慮し、"厳剛新道(以下新道)"の"マチガ沢大滝(以下大滝)"までご一緒し、そのあとは別行動を取ることにする。具体的には、大山さんは、五年前の如く"新道"を更に登って谷川岳山頂を目指し、私はここ"大滝"から下山して"一ノ倉沢"を巡り、駐車場に戻ることとする。 8:40、"水明荘"を後にし、一旦新たなコンビニで昼食を仕入れたのち、谷川岳ベースプラザ駐車場に向かう。駐車場の外には、何時もの通り"ドウダンツツジ"が見事に紅葉しており、壮観と言う他ない。ロープウエイのゴンドラを左に見つつ、緩やかな坂道を数分登ると、何時もの"ヒナウチワカエデ"が目に留まる。だが、葉先は縮れており、色付きも今一つである。やはり、日本列島を縦断した3個の台風と、温暖化による紅葉の遅れが影響しているのであろう。その下には、"ノコンギク"が可憐な花を咲かせている。更に、"マチガ沢"に向かっていくと、日本三大急登の一つ"西黒尾根"が現れる。ここを、何と若い男女が果敢に挑戦していく。この数時間後に、大山さんがこのルートを下ってくるとは、予想だにしなかったが。その先の斜面には、"ブナ"が艶やかに黄葉しており、逆光に映える姿が何とも神々しく映る。谷側に目を転じると、木の間から"松ノ木沢の頭(標高1480m)"が垣間見える。更に数分進むと、ピーク直下から流れ落ちる"松ノ木沢"が全貌を表す。この急斜面を眺める度に、ここを直登できる中高年は、皆無ではないかと思えるが、この数時間後に、ここを踏破できそうな方と偶然出会うことになる。黄葉に包まれた旧道を曲がると、"マチガ沢"が姿を現す。中央には、"谷川岳トマノ耳"のピークが望める。だが、昨年(2018年10月27日参照)に比べて5日遅いにも拘わらず、山麓の黄葉は遅れているようである。その先の"マチガ沢出会"では、休憩することなく、一気に"大滝"を目指すことにする。 10:25、"マチガ沢出会"左脇の"厳剛新道登山口"から、愈々登山開始である。ここの標識には、谷川岳まで3.2㎞とあり、"西黒尾根"直登ルートの3.7㎞よりやや短く、"大滝"までは私でも何とか行けるが、その先は地獄の急登と鎖場が待ち構えており、正に体力勝負となる。5年前このルートを取った際は、西黒尾根との合流点"ガレ沢の頭(2014年10月30日参照)"が目と鼻の先に見えるにも拘わらず、中々行きつけなかったのを思い出す。我に返り、"新道"に入ると、沢の水量は意外と少なく楽に渡渉できる。"大滝"までの中間点辺りに来たであろうか、振り返ると、"マチガ沢"の先の青空に、"笠ヶ岳/朝日岳/白毛門"が悠然と聳えている。何時見ても感動するシーンだが、昭文社の登山地図によると、土合橋から最高峰の朝日岳(標高1945.3m)まで6時間弱とあるので、鉄人でさえ、日帰りは困難と言えよう。 11:45、ツツジの紅葉を撮りつつスローペースで登っていくと、急に視界が開け、"大滝"が姿を現す。ここが"第一見晴(標高1130m)"で、標高差292mを80分で踏破したことになる。昨年より40分以上早く、治療の効果が有ったと言えそうである。一方、"大滝"については、先日の台風の影響もあり、水飛沫を上げていると思いきや、水量は極僅かで、アップで狙っても水流は殆ど確認できない。その真上には、独特の形をした"トマノ耳"が顔を出している。ざっとこれらの光景を写真に収めたのち、昼食を取ることにする。大山さんから、ミカンとバナナを頂戴する。こんな重い物を持参頂き恐縮である。暫くすると一人の若者が登ってくる。明朗快活な学生のようなので、言葉を交わしたところ、八王子にあるT大学3年生で、本日は休校日のため、初めて谷川岳に挑戦したとか。専攻は応用生物で、現在の花形でもある。T大学と聞いて、メーカ時代の知り合いのNさんが、同大学機械系教授に転出された話をする。これも、何かのご縁と言うことになろう。25分程"第一見晴"で過ごしたであろうか。大山さんとはここで別れたのち、私は暫し留まって、持参した望遠レンズで、先程の"笠ヶ岳/朝日岳/白毛門"他を狙う。同シーンをコンデジでも撮影してみたが、やはり彩度/コントラストに明らかな差異が見受けられる。"東尾根"にレンズを向けると、枝振りの良い松が目に留まる。場所柄、尾瀬の"至仏山"で見掛けた"アオモリトドマツ(2015年10月28日参照)"ということになろうか。ここから元来た道を下る。途中で小雨が降ってきたので、"マチガ沢出会"まで下ったところで、雨具を被る。ただ、この天気では、"一ノ倉沢"の立体感溢れる絶景は期待できないので、諦めて駐車場に戻ることにする。 13:35、大山さんから、やっと"ガレ沢の頭"に到着した旨の連絡が入る。タフな大山さんですら、難渋したようである。また、最初の計画通り、"トマノ耳"登頂後に天神尾根を下るとなると、ロープウエイの最終に間に合わなくなる可能性があるので、このまま"西黒尾根"を下るとか。図らずも、大山さんも、5年目の私と同じルートを取ることになったが、滑りやすい蛇紋岩の急坂に十分注意するよう、サジェスチョンする。その後、ポケデジで黄葉を撮影しつつ"西黒尾根登山口"まで戻って来ると、丁度下山してこられた中高年の男性に出くわす。立ち話の中で、谷川岳山頂(トマノ耳?)まで、登り/下り夫々2時間/2時間半かかったとか。標準の2倍以上のスピードであり、正に超人的と言える。この方なら、先程の"松の木沢の頭"への直登ルートも、難なく踏破できそうである。その約20分後、大山さんから、これから鎖場にかかるとの連絡が入る。私は既に駐車場に戻っていたので、大山さんの無事のご帰還を祈念して、先に失礼することにする。二日間お疲れ様でした。ただ、お互いに持病を抱えている関係で、来年の登山は成り行きに任せたい。老子の言葉に例えれば、"上善は水の如し(第8章)"或は"足るを知る(第33章)"と言う所で、無理をしない生き方が一番と言えよう。 |