*** 2013年10月15日 裏磐梯五色沼 ***
写真や下の文字をマウスでクリックすると大きく表示します。
10:35、浄土平を後にして、吾妻スカイラインを裏磐梯五色沼へと向かう。思えばこのルートは、40数年前に通ったはずだが、記憶は完全に消失している。そんな訳で、道中のコメントは差し控える。 11:53、裏磐梯五色沼駐車場に到着する。時間からして、先ずここで昼食を取るべきだが、これを後回しにして、最初の"毘沙門沼"に向かう。実際に湖岸に立ってみると、40数年前の記憶が鮮やかに甦る。HPのプロフィルにある通り、私は高校時代から写真が趣味であり、それを知った鈴木さんが、神秘的な色合の五色沼を是非見せたいと、ここを御案内頂いた訳である。改めて、古いアルバムを捲ってみると、確かに"毘沙門沼"が写っているものの、色はくすんでしまっている。当時は、銀塩フィルムしかなく、プリント写真用は専らネガフィルムが、印刷写真用には、色彩の鮮やかさから、リバーサルフィルム(スライドフィルム)が使われていた。よって、プリント写真では、所詮このレベルであった訳である。従って、今回デジカメで、この微妙な色合いを何処まで再現出来るか、楽しみである。ただ、眼前の"毘沙門沼"は、湖面が乱反射し、背後の磐梯山も雲間に隠れたままである。そこで、神秘的な湖面を求めて、自然探勝路を西に巡ることにする。 12:07、"毘沙門沼"の西側まで来ると、木の間から、艶やかな乳青色の湖面が見てとれる。近づくと、意外と水深は浅く、水は透明である。また、色取り取りの鯉が優雅に泳いでいるので、草津白根山湯釜(2012年7月23日参照)のように、強酸性の湖ではないはずである。従って、何らかの微粒子が溶け込み、これが短波長の白青色を反射して、この魅惑的な色合いになったと考えられる。では、この微粒子が何かだが、湖沼微粒子分析の観点から、地元の福島大学にて解析が試みられているとか。だが、残念ながら、結果は未だに開示されていない。いずれにしても、私は専門外であるので、この発表を気長に待つしかあるまい。 12:20、自然探索路をそのまま西に向かっていると、足下に真っ赤な落葉が目に留まる。これを撮影していると、その格好が珍しく思えたのか、近くの女性が別の落葉を拾い上げ、私に手渡して下さる。改めて見てみると、何と"ツタウルシ"の紅葉である。嘗て、山好きのK准教授より、これに被れて、大変な目にあったと聞かされたことがあり、残念ながら捨てることにする。近くには、"ヤマハゼ"もみられ、それが艶やかに紅葉し始めている。それにしても、周辺には、"ウルシ科"の植物が少なからず見受けられ、これが会津や喜多方の漆器産業に繋がったのであろうか。ふと見上げると、"ツタウルシ"が絡まった巨木に、立ち枯れが目立つ。謂わば、"絞殺しの蔦"とも言うべき光景であり、人間を含む他の生物にとって、中々危険な植物と言わざるを得ない。"バラ"に例えて、"美しいものには棘がある"(There is no rose without a thorn.)という諺が西洋には存在するが、"ツタウルシ"はアジア原産のため、敢えて例えるなら、"美しいものには毒がある"(There is no poison ivy without poison.)というところか。 13:03、"赤沼"に到着する。この小さな湖沼には、名前とは異なり、エメラルド色の水を湛えている。近くの観光客も、"これが赤沼!"と素っ頓狂な声を発しているが、裏磐梯観光協会のWEBによると、酸化鉄の沈殿物がヨシの根元に蓄積して発色した結果とか。改めて、オリジナル画像を拡大してみると、水に浸かったヨシの根元が確かに茶褐色になっているものの、近くの"深泥沼"同様、単に枯れた下草に見える。だが、福島大学のWEBには約pH4.0と五色沼中最大とあるため、もし鉄の化合物であるならば、単なる酸化鉄ではなく、硫化鉄或いは塩化鉄ではなかろうか。大分道草したので、足を速めて"竜沼"に向かう。 13:22、"竜沼"を通過する。比較的大きな湖沼で、"毘沙門沼"同様、豊かな紺碧の水を湛えている。上記福島大学のWEBにも、pH6~7と酸性度が弱い部類に入るとある。そのせいか、沼の周囲を豊かなヨシが囲み、その後方を樹木が覆っている。ここからやや南下して、"弁天沼"に至る。"竜沼"を比べてスケールは格段に大きいが、特に目新しい植生は見られないので、説明は省略する。 13:34、"瑠璃沼"に到着する。ふと、私の愛唱歌・琵琶湖周航歌第四番が思い浮かぶ。その歌詞には、「瑠璃の花園 珊瑚の宮 古い伝えの竹生島 仏の御手に抱かれて 眠れ乙女子やすらけく」とある。所で、今春(2013年5月25日参照)、北条線法華口駅で偶然お会いしたオランダ人巡礼の方が、同島の三十番札所"宝源寺"を訪問したことがあると仰っていたこともあり、私も是非一度仏と乙女子に会いに、同寺を訪れてみたいものである。一方、"瑠璃色"をネット上で検索すると、Wikipediaには、「瑠璃色は、やや紫みを帯びた鮮やかな青。名は、半貴石の瑠璃(ラピスラズリ、英:lapis lazuli)による。・・・」とあり、我が家にも、2010年にパキスタン北部のフンザで買いい求めた小片が現存している。そこで、改めて確認してみると、摩周湖(2010年10月1日参照)が正にラピスラズリの色合いであり、"瑠璃沼"は似ても似つかない。余談だが、湖には"カルガモ"が浮かんでおり、福島大学のWEBにあるpH4~5より、酸性度が低下しているのではなかろうか。 13:42、近くの"青沼"に向かう。探索路から眺めても、吸い込まれそうな青白色をしており、早速湖面まで降りて、この光景を撮影する。では、なぜこの色が生じたかだが、福島大学のWEBには「多量のカルシウムと硫酸イオンが含まれるため、プランクトンが少なく、湖面が青い湖沼です。」とある。更に、この沼の源流は、磐梯山の火口付 近にある"銅沼"で、pH3~4の酸性、鉄・アルミニウム・マンガン等の金属イオンを多量に含むとか。この中に、銅イオンは含まれていないが、何故か"硫酸銅"の色と酷似 している。早速液晶モニターで画像を再生してみると、この微妙な色合いを見事に再現しており、これなら、HP上に掲載しても恥ずかしくなかろう。所で、鈴木さんと訪れた際は、もう少し足を延ばして、桧原湖まで行ったような気がするが、この"青沼"で目的を達した感もあり、ここから元来た道を戻ることにする。 今回は10月14日/15日の両日、大山さんと共に安達太良山/浄土平/裏磐梯五色沼を訪問した。安達太良山では若干消化不良であったが、代わりに浄土平/裏磐梯五色沼で見事な光景に出会い、十二分に福島の秋を楽しむことができた。最後に、嘗て大変お世話になった故鈴木健司さんの御冥福をお祈りしたい。 総歩数:15,245歩 |