*** 2014年9月4日 濃霧の大倉尾根試登 ***
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4月末の鎌倉以来、諸般の事情で写真/登山を控えてきたが、ここにきて漸くリハビリ期間も過ぎたため、久々に大倉尾根から塔ノ岳(標高1491m)を目指すことにする。この尾根は、だらだらと緩やかな坂道が続くことから、"バカ尾根"なる不名誉な名前が付けられているが、見晴茶屋(標高610m)から先は急登が続き、私にとっては決して侮れないルートである。ただ、ハードなアップダウンが続く表尾根と違って、体調に応じて途中で引き返すことも可能であり、病み上がりの私にとっては、最適と言える。 10:00、"大倉駐車場(標高280m)"を後にし、車道を登山口へと向かう。周辺は長閑な田園地帯が広がり、道端には艶やかな"ツユクサ"も開花している。気のせいか、街中のそれより、艶やかさ/大きさ共上回っているように見える。10:08、登山口の標識が現れる。ここを左に折れ、舗装路を暫く行くと、石畳の道に変わる。初秋でもあり、多くの花々は期待いていなかったが、意外や道端には、様々な野草が開花している。それらを撮りつつ緩やかな坂道を登っていくと、急に視界が開け、霧に霞む表丹沢が姿を現す。その手前の草地では、3頭の乳牛が長閑に草を食んでいる。山道脇には、小形の"カンゾウ"のような"キツネノカミソリ"も彩りを添えている。クヌギ林を通過すると、切り落とされたばかりと思しき小枝が、少なからず見られる様になる。先の尖ったドングリは、直径約5mmと小粒であり、樹種は"コナラ"か"ミズナラ"であろうか。 10:40、分岐点が現れる。今回は少し遠回りして、パノラマコースを行くことにする。薄暗い杉林を過ぎ雑木林に入ると、またして、落下したクヌギの小枝が目立つようになる。ドングリは、先程と違って丸型で直径約10mmと大粒であるが、むしろ気になるのは、小枝を切り落とした犯人である。そこで、帰宅早々ネット上で検索した所、"小枝は、ハイイロチョッキリというゾウムシの仲間の昆虫が、ドングリに卵を産み付けた後に切り落としたもの"とあるので、犯人は体調僅か7~9mmの昆虫ということになる。一方、持ち帰ったドングリを、ネット上の画像と比較したところ、先端が平坦になっている特徴から、"クヌギ"ではなく"アベマキ"のようである。元の山道に戻ると、紫の斑点がある"ホトトギス"や、黄色の"クロテンコオトギリ"が開花している。私自身は、前者を見るのは初めてだが、ネット情報によると、丹沢には広く分布しているとか。後者は、付け睫毛のように長い雄花の特徴から、道南の山々で良く見かけた"シナノオトギリ(2008年7月27日参照)"の小形版というとこであろう。 11;10、大倉高原山の家(標高590m)に辿り着く。遥か南西には、相模湾に突き出た真鶴半島が霞んで見える。写真を撮り終え、ベンチで休んでいたところ、中年の男性が下山して来られる。ただ、余りにも早い御帰還なので、塔ノ岳登頂の有無を確認したところ、濃霧で視界不良のため、"堀山の家(標高960m)"で引き返されたとか。私自身も、富士の絶景に供えて、重い望遠レンズ他をザックに詰め込んできたので、残念至極ではあるが、今回はあくまでも試登のつもりなので、頃あいを見て、途中で下山することにする。この直ぐ上の"雑事場ノ平"からは、鮮やかな緑のモミジのトンネルを潜って行くが、あと2か月半もすれば、見事な紅葉(2011年11月26日参照)に変貌する筈である。合流点手前まで来ると、テーブルが設置してあったので、ここで早めの昼食をとることにする。 11:23、"見晴茶屋(標高610m)"に到着する。モダンな建物には、高床式のベランダも設置され、山小屋にしては中々ゴージャスな作りである。ただ、ここまで平坦路が続いたせいで、高度は殆ど稼いでいないことになる。この先から愈々急階段が始まり、その脇をゆっくりとしたペースで登って行く。その内、若いカップルに道を譲ることになるが、何とかここを登りきる。小さなピークを越えると、傾斜も少し緩やかになり、立派な木道が現れる。この一帯も、緑のモミジ回廊が続くが、その中に、赤色の実が目に留まる。一見すると、"ヤマモモ"に似ているが、表面の突起も鋭く、明らかにそれとは異なるようである。帰宅後ネット上で検索した所では、どうやら"ヤマボウシ"の果実のようである。ふと足元を見ると、白い釣鐘のような花が咲いている。全体に紫の斑点があり、先程の"ホトトギス"と類似しているが、花弁が反り返っており、どうやら異種の"ヤマホトトギス"のようである。疲労が蓄積してきたので、休憩を兼ねて、ここで2度目の昼食をとる。 12:42、やっと"駒止茶屋"(標高約900m)に到着する。意外に時間がかかったが、現在の体力では致し方あるまい。ただ、この先から濃霧が立ち込め、山道も確認できない。また本来なら、東方に"三の塔(標高1205m)"が姿を見せる筈だが、この濃霧では望むべくもない。行きかう人も、"この天気では、写真が撮れなくて残念ですね!"と慰めて下さるが、このような幻想的な光景を写真に収めるのも、一興である。そこで、濃霧の中に入っていくと、見事な枝振りの赤松が、墨絵のように浮かび上がって見える。 ここで暫し撮影に熱中したあと、堀山(標高943m)を越え、一旦下ったあと、痩せ尾根を登って行く。途中、キク科の"マルバダケブキ"が群落を作っていたが、北海道で猛威を振るう"オオキンケイギク"同様、何とも親しめない姿である。 13:20、"堀山の家(標高960m)"に辿り着く。ただ、今後濃霧が晴れそうな気配もないので、先程の男性同様、ここで引き返すことにする。20分程下ったであろうか。霧の中に、何やら動くものが確認できる。そっと近づいて見ると、何と鹿である。最近の新聞によると、2月の大雪で、丹沢の鹿の多くが餓死したとあったが、この鹿は幸運にも生き残ったようである。更に数メートルまで近づいてみると、体も小さく白の斑点があったので、雌の若鹿であろう。ここから、ひたすら下るだけであったが、急坂でふと立ち止まると、"良い写真が撮れましたか?"と声をかけられる。話をする中で、横浜井土ヶ谷在住のOさんと仰る方で、かなりの写真マニアであることが分かる。また、嘗て私と同じEOS5Dをお持ちで、現在はNIKONのフラッグシップ機・D800に変更されたとか。EOS5Dと言えば、フランクフルトからの帰国便内(2007年3月12日-14日参照)で偶然お会いしたKさんもお持ちだったが、これもカメラが執り成す不思議な御縁であろうか。一方、世界最高の3630万画素CMOSを搭載したD800については、ブレのレベルまで判別できる圧倒的な解像度とか。これも、キャノンがデジタル一眼の分野で胡坐を掻き、EOS5D MarkⅢで、碌な改善を行えなかった結果である。私も、D800を試写してみたいところだが、交換レンズも含めて相当の出費となるので、諦めざるを得ない。そうこうするうちに、大倉駐車場が近づいてきたので、再会を願ってお別れする。 今回は、十月中旬の一切経山/安達太良山登山に供え、自身の体力をチェックするため、大倉尾根を試登した。体力/筋力の低下は致し方なかったが、思いがけない方や光景に出会え、楽しい登山となった。次回は、紅葉の時期に再挑戦したい。 総歩数:15,661歩 登りの厳しさ:大倉~駒止茶屋(▲~▲▲),駒止茶屋~堀山の家(▲▲▲~▲) |